5日から観客と出会っているミュージカル『ファンレター』は、日帝強占期の1930年代を背景にしている。当時の文人であったキム・ユジョンとイ・サン作家などが集まっていた『九人会』の逸話からアイデアを得て創作されたファクション作品だ。ファクションは事実(fact)と虚構(fiction)を結合した韓国式の新造語である。
劇場に入るとすぐに目を引くのはセットだった。このセットはモダンでありながら日本式家屋の雰囲気を再現したミザンセーヌの役割を果たした。公演中、照明と影はジョン・セフンとヒカル(韓国語ではビッ)の関係性を示すのに重要な役割を果たした。この装置は劇の序盤から観客を1930年代に没入させた。
作品は天才小説家キム・ヘジンと彼を憧れる作家志望生ジョン・セフン、そしてキム・ヘジンのミューズであり秘密に包まれたヒカルの絡み合った物語を描く。三人は『手紙』を媒介に複雑な関係性と感情を描き出す。
ファクションは歴史的事実に基づいて新しいシナリオを再創造する文化芸術ジャンルである。それに合わせて1幕から事実に基づいた虚構が作られる。キム・ヘジンがジョン・セフンの『ブキャ』とも言えるヒカルを女性と誤解したまま手紙で愛を告白し、出会いを望むという設定である。
1幕の中でキム・ヘジンはヒカルと手紙をやり取りし、彼を驚くべき筆力を持つ女性としっかり誤解する。その過程で九人会のメンバーたちが見せる話術は観客が当時の作家たちと内的な親近感を形成するのを助ける。しかし2幕ではヒカルの正体を疑う人物が現れ、緊張感が高まる。喀血していたキム・ヘジンがヒカルに過度に依存する姿は観客の心配を引き起こす。
『ファンレター』は一編の繊細な文学のような舞台で好評を受け、2016年の初演以来今年で10周年を迎えた。流麗な文章、調和の取れた各キャラクターの魅力がロングランの理由として挙げられる。
『ファンレター』の一部の俳優は11日にメディアと会った場で作品について「叙情的な雰囲気と心を打つ美しい言葉が観覧ポイント」と語った。彼らは最も注目すべき点として登場人物間の関係性を挙げ、「各キャラクターが互いにどう接するかを観察すればもっと楽しく見ることができる」と述べた。
ジョン・ダヨン テンアジア記者 light@tenasia.co.kr